このようなケトルは「spirit kettle/スピリットケトル」とよばれます。スピリットはアルコールの意味であり、アルコールランプは別名スピリットランプといいますので、アルコールランプで温めるケトルをスピリットケトル、と呼ぶのだと思われます。
このようなケトルは17世紀、アン女王の時代からあったといわれます。銀で作られていたことが多く、かなりな贅沢品でありティーパーティの格好のアクセサリーとして好まれました。
その後、ヴィクトリアン、エドワーディアンにかけてアルコールランプの進歩とともに更に普及し、富裕層の間で大層流行しました。材もシルバーだけでなく、銅や真鍮なども使われ、デザインも多肢に渡り、人々の眼を愉しませてきました。
現代では、なかなかこのケトルでお茶を飲む方は少ないと思われますが、コレクタブルなアイテムとして好まれています。
このケトルのデザインは流麗なラインが美しいアールヌーヴォー様式。
Gebrüder Bing社はドイツ、ニュルンベルクにおいて1863年に設立されたキッチン用品の会社。後年はおもちゃ等も製造していましたが、1932年にはクローズしています。Gebrüder Bing社の活動期間が1863-1932年ですので、おそらく1890年代頃の作と推測いたします。
材は赤茶色の部分が銅、くすんだ金色の部分が真鍮。ケトルの内側には銀色のメッキが施されており、恐らくニッケルメッキと思われます。(ちなみに現代の銅製ケトルも内側にはニッケルメッキが施されいるのが一般的です)
現代でもランプに燃料を入れれば火をつけることが可能ではありますが、どちらかといえば本格的な加熱はせず、水入れやディスプレイとしてお愉しみいただいたほうがよろしいかと思います。例えば窓辺においてグリーンへの水遣り用などにいかがでしょうか。
当時の優雅なティーパーティを彷彿とさせる、英国アンティークの佳品。
本物の材と美しい形で、アールヌーヴォーの時代を追体験してみてはいかがでしょうか。
■ドイツ
■主素材:銅・真鍮
■推定製造年代:1890年代
■サイズ(スタンドにケトルをセットした時):幅21/奥行20.5/高さ26.5cm
■こちらのお品物はアンティークです内側には錆や汚れがみられます。
■ランプをご使用の場合はお取り扱いに十分ご注意ください。